
<関連記事>
サーベルタイガーのミイラを発見、ついに本当の姿が明らかにさまざまな復元図や博物館の模型のほか、映画『アイス・エイジ』シリーズにも登場するが、サーベルタイガー(剣歯虎)が実際にどんな姿をしていたのか、古生物学者はおよそ200年ものあいだ疑問に思ってきた。見つかるのは骨の化石と足跡だけで、長い牙を持つこの肉食動物の本当の容姿はずっと謎だった。
ミイラ化したマンモスなどの草食動物は見つかっているが、食物連鎖の頂点にいた肉食動物が見つかるのは稀だ。野生では、捕食される側の動物は、捕食する側よりも数が圧倒的に多くなる傾向にある。そのため、サーベルタイガーのミイラが見つかる可能性は低いと思われていた。
ロパーチン氏ら論文の著者は、この幼獣をホモテリウム属のHomotherium latidensと特定した。「短剣のような牙」を持つスミロドンよりも短い鋸歯状の犬歯を持ち、「シミター(三日月刀)キャット」とも呼ばれるハンターだ。
サーベルタイガーのイラストでは、犬歯が口からはみ出すような姿で描かれることが多い。スミロドンのような種では確かにそうだったかもしれない。だが、2022年の分析によって、ホモテリウムの鼻口部は大きく、サーベルのような歯は、口を閉じているときはまるで“隠し武器”のように上唇に隠れていたことが示された。
今回のミイラからは、ホモテリウムの成獣でも牙が隠れていたかどうかを判定するのは難しい。ロパーチン氏によれば、幼獣の上唇は現代のライオンの幼獣の2倍以上の大きさとのことで、成長するにつれて生えてくる長い牙を隠せるような唇だった可能性はある。
体の色も長年の謎だ。現代のネコ科動物の毛色は、狩猟する環境と関係することが多い。開けた草地に生息するライオンやピューマ、ネコ科の場合、比較的同じような明るい毛色になりがちだ。樹木が少なく、草が生い茂る寒々とした「マンモスのすむ大草原」をうろついていたことから、ホモテリウムの動物もまた、広がる大草原に溶け込みやすい毛色だったのではないかと考えられていた。 「ミイラの毛の色が一様に濃い茶色だったのは全く予想外でした」とロパーチン氏は語る。「数年前に永久凍土で発見されたホラアナライオンの子どもと同じく、ホモテリウムの子どもも暗めの毛色で生まれ、成長するにつれ明るい色になっていったのでは」と指摘する。
「足の肉球はライオンよりもかなり丸い」とレイノルズ氏は指摘する。また、現代のネコ科動物にはある手根球(しゅこんきゅう。足の先端から少し離れた場所にある)がこのミイラにはない。理由は不明だが、こうした差異を調査すれば、サーベルタイガーと現代の大型ネコ科動物との違いが一層明らかになるかもしれない。 ホモテリウムとその近縁種は、単なる「牙の長いライオン」ではなく、今とは違うさまざまな大型動物が生息していた非常に異なる世界の中で進化した捕食動物だ。冷凍状態で見つかったミイラは、サーベルタイガーが大草原を歩き回っていた時代を私たちに実感させてくれる。
<全文はこちら>
サーベルタイガーのミイラを初めて発見、ついに本当の姿が明らかに「大興奮」と研究者 …りを得意としていたサーベルタイガーは、気候変動や人間の活動によって大型の獲物が姿を消したのに伴い、絶滅した。現在、サーベルタイガーのような狩りをするネ… (出典:ナショナル ジオグラフィック日本版) |
コメントする