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身長3メートルで史上最大の類人猿、食べ物の好みを変えられずに絶滅していたギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)は史上最大の類人猿だった。おとなの身長は約3メートル、体重は200~300キロもあり、現在の中国にあたる地域の深い森林に生息していた。
この印象的な草食動物が考古学者によって発見されてから100年近くになるが、絶滅の原因ははっきりしていなかった。
これまで専門家たちは、密林を好んだギガントピテクスは生息地の樹木がまばらになるにつれて絶滅に追い込まれたと推測していた。だが、これまでに見つかった化石からは、その仮説を検証するために必要となる明確な年代が分からなかった。
ギガントピテクス・ブラッキーと同じ時代に生きていた他の類人猿が生き残ったことは、謎を深めるばかりだった。実際、現在のオランウータンに近い仲間のポンゴ・ワイデンライヒー(Pongo weidenreichi)は、ギガントピテクスを絶滅に追いやった変化に耐えることができた。
研究チームは、ギガントピテクスの化石が発見された場所の花粉化石を調べることで、この期間に彼らの生息環境に起きた変化を明らかにすることができた。その結果、彼らが暮らしていたマツ、カバノキ、クリなどが生い茂る森林は、約70万年前には木がまばらになり、より開けた草原に変化していたことが明らかになった。ギガントピテクスは、この環境の変化とともに衰退し、やがて姿を消したのだ。
かつてギガントピテクス・ブラッキーとポンゴ・ワイデンライヒーは、樹木がうっそうと生い茂った森林に暮らし、ほぼ一年中、おいしい木の葉や果実や花を食べていた。 しかし、やがて季節の変化が著しくなり、森林がまばらになってくると、ギガントピテクスは好物を見つけるのが難しくなった。一方、ポンゴ・ワイデンライヒーは食生活を変えて、手に入りやすい繊維質の植物を食べるようになった。 オーストラリア、グリフィス大学の古生物学者であるジュリアン・ルイ氏は今回の研究には参加していないが、「研究チームは、ギガントピテクス・ブラッキーがこれまでの環境に特化しすぎて変化に適応できなかったことを見事に示しました」と言う。
彼らは体が非常に大きかったので樹上ではなく地上を移動しなければならず、餌を探しに行ける範囲が限られていたのだ。彼らは小枝や木の皮など、手の届くところにあった堅いものをできるだけ食べようとしたが、それも十分ではなかった。
いまだ残る謎
約21万5000年前、最後のギガントピテクスは生息地の変化についていけずに絶滅した。しかし、物語の結末を知ったからといって、ギガントピテクスの謎がすべて解決したわけではない。ウェスタウェイ氏によると、最後のギガントピテクスの中には最大級の個体もいたが、その理由はまだ解明されていないという。 さらにルイ氏によると、タイ、ベトナム、そしておそらくジャワ島からもギガントピテクスの化石が発見されているという。彼らも、同じ絶滅への道をたどったのだろうか? それとも生息地によって異なる道をたどったのだろうか? 「今回の論文のおかげで、この時期の東南アジアにおける絶滅のダイナミクスについての私たちの理解は大きく深まりました」とルイ氏は言う。史上最大の類人猿が姿を消した経緯は明らかになったが、同時に新たな謎も生まれた。
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