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生物の大量死を招き漁業に大打撃を与える「海洋熱波」が増加、「非常に大きな懸念」2013年末、アラスカ湾の海水温が上がりはじめた。数カ月のうちに海面の水温は平均で2.8℃、場所によっては3.9℃も上昇した。暖まった海域は、当初は幅約800キロ、深さ約90メートルの範囲だったが、2014年半ばには2倍以上に広がり、最終的にはアラスカからメキシコまで約3200キロに及んだ。科学者たちが「ブロブ(The Blob)」と呼ぶこの現象は海洋熱波の一例であり、わずか3年で北太平洋の生態系をめちゃくちゃにした。
海洋熱波は、海水温が異常に高い状態が5日以上続く現象を指すが、多くは数週間から数カ月にわたって持続する。気候変動によって引き起こされ、海水温が元に戻ってからも数年にわたって海洋生態系に影響を及ぼし続けるおそれがある。気候変動の影響が世界中に広がるにつれ、海洋熱波は頻度と強度を増しており、海洋環境にとって「非常に大きな懸念」となっていると、気候変動リスクを分析・予測するジュピター・インテリジェンス社の海洋学者ヒラリー・スキャネル氏は指摘する。
海洋熱波の直接的な原因はさまざまだ。西オーストラリアでの海洋熱波の原因は、南に向かって流れるルーウィン海流が強くなり、インド洋から流れ込む暖かい海水が増えたせいだった。同様に、オーストラリアとニュージーランドの間のタスマン海で2015~16年に発生した海洋熱波は、サンゴ海から南下する東オーストラリア海流が強くなったことが原因だった。 逆に、海水が動かなかったことが原因となったケースもある。2013~14年のブラジル沖の海洋熱波をはじめ、大西洋南西部の海洋熱波の60%は、インド洋に居座って海水を安定させる高気圧に起因していたことが2019年7月に学術誌「Nature Geoscience」に発表された研究で判明している。
とはいえ、海洋熱波をより頻繁に、より激しくさせている根本的な要因は気候変動だ。化石燃料の燃焼によって大気中に排出された熱の90%は海洋に吸収されるため、その熱のほとんどが集中する海面から深さ700メートルまでの水温は、1901年以降、平均で約0.8℃上昇している。すでに海水温が上がった海域では、海洋熱波がより発生しやすくなることが予想され、実際にそうなっているようだ。 2020年9月に学術誌「サイエンス」に掲載された論文は、人為的な地球温暖化の結果、海洋熱波が20倍以上に増えたと結論づけている。
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生物の大量死を招き漁業に大打撃を与える「海洋熱波」が増加、「非常に大きな懸念」 …世界中から海洋熱波と被害の報告 科学者たちが北東太平洋のブロブの解明にのりだした頃、オーストラリアのパースでは15人の海洋専門家が集まり、海洋熱波に関す… (出典:ナショナル ジオグラフィック日本版) |
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