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かつて大量に駆除されたバイソンが草原に戻ると植物種が86%も増える、30年かけて究明過去29年間、米国カンザス州東部に広がるトールグラス・プレーリー(丈の高い草が広がる草原)の同じ区画を年2回ずつ歩き、見つけうる限りの植物種を集計してきた科学者たちがいる。
そして今、ほぼ30年にわたる努力とデータが、驚くべき結果を示している。
8月29日付けで発表された論文によれば、バイソンが草を食べていたトールグラス・プレーリーの区画では、約30年間で在来植物の種の豊かさが86%も上昇していたという。
今回の研究では、カンザス州立大学と自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーが共同所有する約3500ヘクタールの自然保護区の一部を調査対象とした。約800ヘクタールの広大な草原にバイソンが通年で放されている区画のほか、4~11月の生育期にウシだけが飼育されている区画を設けた。また、これらの草食動物が与える影響を調べるため、第3の区画では、どちらの種もいない状態を維持した。
草食動物がいない区画は、大部分がわずか4種の在来種の草に覆われていた。ビッグブルーステム、インディアングラス、スイッチグラス、リトルブルーステムの4種だ。しかし、バイソンやウシがこれらの種を刈り取ると、ほかの劣勢な植物が繁茂するようになった。
特に恩恵を受けたのはアキノキリンソウ属のリジッドゴールデンロッドだった。背が高く、花を咲かせる広葉草本だ。草食動物がいない区画では、この種を見かけることはほとんどなかったが、バイソンが放されている区画では、この種がたびたび現れた。同様に、バイソンの区画では、乾燥に適応した草がいくつか定着し、それまで見られなかった一年草も11種確認された。
約50年間で何千万頭が数百頭にまで減少
1800年代半ば、米国には3000万~6000万頭のバイソンが生息していたが、米国政府が先住民の重要な食料源を奪うためにバイソンを駆除し、1889年までに、わずか数百頭しか残されていない状況になった。今回の研究結果は、バイソンをかつての生息地に再導入するための継続的な取り組みが、先住民とその文化だけでなく、土地や自然環境にも多大な利益をもたらしていたことを示唆している。
バイソンは動植物を育む「キーストーン種」
なぜバイソンはウシよりも在来種に生育しやすい機会を与えるのか? まだ断言できる段階にはないものの、ラタジザック氏はいくつかの仮説を考えている。
ラタジザック氏によれば、バイソンの草食は不均一な傾向にあるという。バイソンはある場所を踏みつぶし、根こそぎ食べる一方で、別の場所には手付かずの草原を残す。その結果、より多様な植物が繁茂する。一方、ウシはより整然と均一に食べる傾向がある。
バルデス氏はバイソンをかつての生息地に呼び戻す活動を行っている。ワイオミング州のウインド・リバー・インディアン居留地には、再導入されたバイソンが100頭近く暮らしている。バルデス氏によれば、今回のような研究に後押しされ、米国とカナダの両方で、再導入の機運が高まっているという。バイソンの再導入によって、先住民の食料主権と経済的持続性が改善すると示唆する研究結果もある。
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かつて大量に駆除されたバイソンが草原に戻ると植物種が86%も増える、30年かけて究明 …30%だった。つまり、アメリカバイソンはウシの3倍近くも貢献していたわけだが、その理由はまだわかっていない。 「バイソンがこれほど大きな影響を与えてい… (出典:ナショナル ジオグラフィック日本版) |
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