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激減したはずの北米の蝶の「皇帝」オオカバマダラ、実は増えている? 研究に異論もある科学者チームが25年分のデータを調査した結果、驚くべき結論を出した。なんと北米のオオカバマダラ(Danaus plexippus)が増えているというのだ。
オオカバマダラというチョウは、北米では最長4800キロにも及ぶ長い渡りをし、「皇帝(monarch)」の二つ名をもつ有名な昆虫だ。だが、過去数十年にわたって激減し、存続が危ぶまれていた。もし今回の発見が真実ならば、そうした認識が覆される可能性がある。
誤解のないように言っておくと、オオカバマダラは北アフリカや東南アジアなどにも生息しており、種全体としてはまだ健在だ。しかし、北米のオオカバマダラは異なる。 近年、北米の群れは激減していると言われ続けてきた。北米東部の群れは、過去40年間で約80%減ったという報告もある。
論文の最終著者である米ジョージア大学の動物生態学者アンドリュー・デイビス氏らは、北米チョウ協会(NABA)が毎年行っているチョウの個体数調査で1993~2018年に集められたデータを調べた。その結果、ある場所ではオオカバマダラが減っている一方、別の場所では増えていた。そして、全体的にはわずかに増加傾向にあると推定された。 NABAのデータに基づいて同様の結論を出したのはデイビス氏らが初めてではないが、これまでで最も広範囲にわたる分析だとデイビス氏は自負する。 また、オオカバマダラのライフサイクルは複雑なため、観察が特に困難だと氏は付け加える。
オオカバマダラは毎年、5世代かけて北米を移動する。そのため、科学者はメキシコの越冬コロニー(集団)に注目してきた。メキシコは、オオカバマダラが一堂に会する唯一の場所であり、調査がしやすいからだ。 しかし、オオカバマダラのライフサイクルの一部だけに注目すると、全体像を見逃してしまう恐れがある。そこでデイビス氏らは、市民ボランティアが集めたデータに注目した。オオカバマダラの個体数について信頼できる推定値が得られるからだという。
米ニュージャージー州に本拠を置く非営利団体のNABAは、毎年7月にチョウの個体数調査を実施しており、数千人のボランティアが参加する。調査地点は北米の400カ所以上で、1カ所につき直径15マイル(約24キロ)の円内にいるチョウを数える。 この大規模な取り組みにより、オオカバマダラの個体数が米国とカナダの403カ所から得られた。オオカバマダラの数について、毎年の概観を示すものとしては他に類を見ないデータだ。 このデータを分析したところ、北米のオオカバマダラは25年間で年1.36%の割合で増加していた。さらに、論文の著者らによれば、オオカバマダラは他のどのチョウよりも多くの場所で観察されているという。 「このプロジェクトには統計学者の中でも最も優秀な部類の人たちが参加し、可能な限り最も高度で最新の分析方法を用いたということを言っておきたいと思います」とデイビス氏は話す。
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激減したはずの北米の蝶の「皇帝」オオカバマダラ、実は増えている? 研究に異論も 誤解のないように言っておくと、オオカバマダラは北アフリカや東南アジアなどにも生息しており、種全体としてはまだ健在だ。しかし、北米のオオカバマダラは異なる。 近年… (出典:ナショナル ジオグラフィック日本版) |
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